賃貸アパートやマンションの管理会社にとって、退去後の部屋が「汚部屋」であった場合の対応は極めて深刻な課題です。通常の退去クリーニングでは到底太刀打ちできない汚損状況に対し、いかにして最小限のコストと期間で「原状回復」を行い、次の入居者を募集できる状態に戻すか。ここでは、ある単身者向け物件で起きた実際の事例を基に、プロのハウスクリーニングの威力を解説します。その部屋は、三年間一度もゴミが出されず、床にはコンビニ袋が三層に重なり、ベランダまで不用品が溢れ出していました。特に深刻だったのは、ゴミから漏れ出した水分によってフローリングが腐食し、壁紙の裾部分が真っ黒に変色していたことです。さらにキッチンは油と埃が層を成し、コンロ周りは発火の危険があるほどでした。管理会社から依頼を受けた専門業者は、まず三日間かけてゴミの全撤去と仕分けを行いました。その後、本格的なハウスクリーニングに着手しました。フローリングの腐食が深刻な箇所は一部張り替えが必要でしたが、その他の黒ずみについては、特殊な漂白剤と研磨技術を駆使し、建材の風合いを壊さずに汚れを吸い出しました。浴室の鏡の鱗汚れや、トイレの重度の尿石も、プロ仕様の酸性洗剤と電動ポリッシャーによる磨きで、陶器の質感を蘇らせました。仕上げに行われたのが、部屋全体の「オゾン脱臭」です。これにより、数年間にわたって染み付いていた生活臭や腐敗臭を完全にリセットし、最後に抗菌・抗カビコーティングを施すことで、部屋は新築時と見紛うほどの清潔感を取り戻しました。この事例のポイントは、単に掃除をするだけでなく、建材のダメージを最小限に抑えつつ、視覚的・嗅覚的に「清潔であること」を完璧に再現した点にあります。汚部屋であっても、プロのハウスクリーニングを適切に介入させることで、多額の修繕費用をかけずに、物件の価値を再生させることが可能です。これは、所有者や管理会社にとっても、そして何より退去費用を負担する借主にとっても、最善の解決策となるのです。
賃貸物件の汚部屋をハウスクリーニングで原状回復する事例