ゴミ屋敷と聞いて多くの人が連想する不快な光景の一つが、無数の「コバエ」が飛び交う様子ではないでしょうか。この小さな羽虫はなぜゴミ屋敷であれほどまでに大量発生するのでしょうか。その理由はコバエの生態とゴミ屋敷の環境がまさに完璧に合致しているからに他なりません。コバエは非常に繁殖力が強く、わずかな餌と水分そして適度な温度があれば爆発的にその数を増やします。そしてゴミ屋敷は彼らにとってまさに理想的な「繁殖工場」なのです。コバエが大量発生する主な原因は三つあります。第一に豊富な「餌」の存在です。ゴミ屋敷に溜まった食べ残しの弁当や惣菜、腐りかけた果物や野菜そして飲み残しのジュースの糖分。これらは全てコバエの幼虫にとって極上の栄養源となります。特にショウジョウバエはアルコール発酵した腐敗物を好むため、ゴミ屋敷は彼らにとって楽園のような環境です。第二に最適な「産卵場所」です。コバエは湿り気のある有機物に卵を産み付けます。キッチンのシンクに溜まった生ゴミや排水溝のヘドロ、こぼれた飲み物が染み込んだ床やカーペットそして観葉植物の受け皿に溜まった水など、ゴミ屋敷には彼らが安心して子孫を残せる場所が無数に存在します。一匹のメスが数百個の卵を産むためあっという間にその数は手に負えないレベルに達してしまいます。第三に外部からの「侵入が容易」であることです。コバエは体が小さいため網戸の僅かな隙間や換気扇、排水管などを通じて簡単に家の中に侵入してきます。そして一度内部に餌と産卵場所を見つけるとそこに定住し世代交代を繰り返しながら勢力を拡大していくのです。このようにゴミ屋敷はコバエが繁殖するための「餌」「産卵場所」「侵入経路」という全ての条件が完璧に揃った最悪の環境なのです。